ネイティブが他国の人に適した教材を作るのは難しいことです。私たちが日本語教材を作成することを想像してみてください。
まず母語について説明することはネイティブにとっては、とても難しいのです。それは文法を習っていないからという理由だけではありません。言語自体がかなり幅広い使われ方をしているからです。
そのような言語を私たちは難なく使いこなせているのは、膨大な量の状況と結び合わせているからです。逆に膨大な量の状況と結びついているがゆえに「この単語のコアイメージはどれなのか」と問われても、母語話者は答えるのが難しくなってしまうのです。
加えて、お互いの言語ごとにズレている部分が異なります。相手の言語についても詳しくなければ、自国言語とのズレを表現することができません。
教材の良し悪しはどれほど学習者に寄り添っているかだと考えています。その意味で、英語を母語とするネイティブは、日本語を母語とする日本人とはそもそものポジションが違っているので、寄り添うのは難しいことなのです。
もちろん、状況ごとに違和感があるかどうかをネイティブは判定できます。逆に言えば、普通のネイティブに期待できることは、そのような違和感がないかどうか判定してもらうことだけなのです。