制作者からのメッセージ

制作者からのメッセージ

私はこれまで何度も英会話の習得にチャレンジして、そのたびに挫折したり何となく中断してしまったという、ふつうのおじさんです。 しかし、他の分野の教科書制作をしていた経験もあってか、ある日
「こんな私でも英会話ができるようになる、そんな教材を作ってみようじゃないか」
「私が悪いんじゃない。これまでの参考書や教材が悪いんじゃないか
「そんな私だからこそ、もう挫折しなくていい英会話教材が作れるんじゃないか
と、そんな思いがフツフツと湧き上がってきました。

それは2010年のことでした。まず私は当時販売されていたあらゆる英会話教材のHPをサーフィンして「これは!」と思うものを、いくつか実際に購入しました。 全部でおよそ36万円という高い買い物になりましたが、最近の有名教材なら「私でも英会話が身につく」ものがあるかもしれないと思ったからです

私が購入した教材のHPには、いかにも英語ができるようになりそうな素晴らしい理論や、著名人の推薦文、 有名なタレントやスポーツ選手の成功体験などが掲載されていて、「これなら私でも!」という期待を掻き立てられました。

英会話学習は「孤独」との戦い

ところが、届いた教材を開けてみると、HPで熱心にPRしていた人たちは完全に姿を消してしまって、目の前にあるのは音源のCD、英文と日本語訳、そしてごく簡単な英文解説のテキストだけ。そこに道先案内人の姿はありませんでした。あの人たちが私をやる気にさせたのに…

「いやいや、これだけの値段なんだから実際に使ってみたら違うかもしれない!」と思って、一生懸命使ってみます。 でも、やっぱり見知らぬ場所で一人っきりで戦っているような孤独さは拭えませんでした。「う~ん、本屋さんで1000円くらいで買えるCDブックとあまり変わらないな…」

英語がわからなくても触れ続けられる教材を

「これじゃダメだ!」と思い、少し方向を変えて、英会話ができるようになった人の共通点を徹底的に調べることにしました。たくさんの事例に触れる中で「これだ」と思ったのは、英会話ができるようになった人の多くは「英語を学ぶ前に、洋画・洋楽・カートゥーン(欧米の漫画)などが好きだった」ということでした。

英語がわからなくても、映画や音楽、マンガ自体が好きだから、見たり聞いたり読んだりすることが苦にならない。繰り返し触れ続けているうちにあらすじ・内容を覚えてしまい、そこで使われている英語がニュアンスも含めてわかってくる。お気に入りの英語表現、使ってみたい英語表現が少しずつ増えてくる。そういう流れで英会話ができるようになった人が多かったのです。

「なるほど」と納得しました。しかし、一方で「洋画・洋楽・カートゥーン」に代表されるような欧米文化の中に、現時点で好きなものがない人はどうすればよいのか?とも思いました。

そこで、英会話教材(英会話エクスプレス)のあるべき姿として私の頭に浮かんだイメージは、アニメの「サザエさん」や「ドラえもん」でした。日本人であれば音声を消しても、画面を見ているだけでストーリーがわかる。 そんな典型的な日本文化を題材にすることで、英語そのものがわからなくても孤独を感じない教材ができるのではないか、と思ったのです。

これはよく言われる「ネイティブ発想の英語」を尊重するのとは、ある意味で逆の考え方だと思います。 もちろん「ネイティブ発想の英語」は大切だと思いますが、その「背伸び発想」が初心者の学習意欲を低下させてしまっては本末転倒になってしまいます。

そこで、私はまず日本のありふれた親子の会話や友だち同士の会話などを題材とした日本語シナリオをつくりました。 それから、その日本語シナリオをもとに英文をつくっていったのです。

日本文化と英語文化のギャップが至るところに姿を現す

英文の監修は、日英バイリンガルでTOEICの試験問題などもチェックされている方にお願いしました。 監修者にまず指摘されたのは、「磯野家の会話」や「ジャイアンとのび太の会話」の中には、英語に訳せないものがたくさんあるということでした。

例えば、英会話エクスプレスには以下のような日本語シナリオ(『京の都で過ごす夏Ⅰ』)があります。

N 大和が玄関の引き戸を引いて、家に入ります。

大和 こんにちは。おじゃまします。

智一 いらっしゃい。外暑かったやろ。上がって。

この大和のセリフの「おじゃまします」をどう訳すか。最終的には次のようにしました。

N Yamato slides open the front door.

Yamato Good afternoon.

Tomo Hey, welcome. It’s so hot today, isn’t it? Come on in.

そうです。「おじゃまします」自体を思いきって省略したのです。 監修者によると、実は、この「おじゃまします」を英語に訳そうとする発想が、英会話の上達を「おじゃまする」原因の1つでもある、と言われたのです。 なぜなら、英語文化圏では許可なしに他人の家に入ることはなく、Come on in.と言われる前に「おじゃまします」と言いながらドアを開けることはないからです。

このように、日本人に親しみやすい会話を英語にしようとすると、日本文化と英語文化のギャップが至るところに姿を現しました。それ自体が日本語発想を英語発想に切り替える作業だったと言ってもよいでしょう。 「磯野家の会話」や「ジャイアンとのび太の会話」がこのような日本語と英語のギャップを気づかせてくれ、自然な英語がどういうものなのかを意識させてくれるのに、たいへん役立つことがわかってきたのです。

こうして、出来上がったのが『英会話エクスプレス 第一版』でした。制作プロジェクトを始めてから一年後のことでした。

 英文スクリプトと日本語訳、簡単な解説で構成

英語表現を丸暗記しただけでは、実際の英会話では使えない

さてさて、「ようやく自分のための勉強ができる。これでちゃんと英会話ができるようになったら本腰を入れて販売していこう!」と思い、出来上がった英会話エクスプレス(第一版)を使って学習を始めました。 ただ、一人だけではサボってしまう可能性があったので、英会話教室のマンツーマンレッスンを契約し、毎週ストーリーを丸暗記して、ネイティブ講師の前で暗唱をするということを9ヶ月間行いました。

その結果、英語にかなり慣れてきたなぁ、という実感を得ることができました。 元々イメージしやすい題材でテキストをつくったこともあり、実際の会話でその場に合うフレーズをある程度口にすることもできるようになりました。

しかし、一方で残念ながら丸暗記の限界も感じました。 英語表現の“ニュアンス”をつかみきれていなかったのです。 言い方を換えれば、覚えたフレーズをそのままであれば使えるが、応用して使うことができないということでもありました。

そこで、本腰を入れて販売していく前に、英語表現のニュアンスをはっきりさせるのに役立つ「解説」をプラスすることにしました。 大学で言語学を研究していたアメリカ人の女性に協力をお願いして、特に日本語とのニュアンスのズレが大きい英語表現に焦点を当てて、確認をしていきました。

具体的には「こういう状況ではこの表現は自然なの?それとも不自然?」ということを確認していく作業です。

このようにしてネイティブの感覚やモノの見方を解説にもり込んで出来上がったのが『英会話エクスプレス 第二版』でした。

 テキストブックと解説冊子

英会話学習を無理なく続けられる構成に修正

制作プロジェクトを開始してから、すでに二年以上が経過していました。 私は「これで、ようやく英会話の習得に困っている多くの日本人学習者を助けることができる!」と思い、勢い込んで友人たちにモニターとして使ってみてほしいと依頼しました。

私としては当然、最大級の評価が返ってくると期待していたのですが、実際のレビューは想定よりもかなり低いものでした。

  • ストーリーはイメージしやすいけど、英文と日本語訳だけだとやはり厳しい(絵がない)。
  • 解説の文章が硬くて研究レポートのような印象で、疲れているときには読みたくない。
  • 音読練習の効果はわかるけど、暗記するまでやれとなると続ける自信はない。

ショックでした。私の場合は制作者ということもあり、教材の良し悪しを検証するという目的があったのでクリアできた部分が、モニター参加者にとっては高いハードルとなっていたわけです。 はっきり言えば、長時間の学習が大好きなマッチョ向けで、内容も「研究レポート」のように深掘りをし過ぎていたので、結果的に商品としてはイマイチだったのです。

そこで、専門の編集者の手を借りて、学習者が無理なく続けられる構成に変更していきました。 最初に全体のイメージをイラストで提示する。解説については深掘りしすぎているところは削除し、気軽に読めるようにする。 音読などの回数は指定せず、ノルマっぽい印象はすべて取り払う。だいたい1セクション10~15分程度で学習できるように収める。などの改善を加えました。

このようにして出来上がったのが、現在販売している『英会話エクスプレス 6ヶ月コース』(第三版に相当)です。

英会話エクスプレス 6ヶ月コース

初めての「ネイティブの友だち」のような存在として

この文章を書いている時点(2015年10月)で、制作を始めてから約5年が経ちました。 この間に学んだことはたくさんありますし、まだまだ学ぶべきものがあるとも思っていますが、その過程で私は多くの方に支えられてきました。 私にとっては、そういった方々が英語の世界への道案内やサポートをしてくれたのです。

だからこそ、いま私は「この教材はどんな教材なんですか?」と聞かれたときに「英会話ができるようになる教材」とは言わないことにしました。 皆さんが無理なく英語の世界へ入っていける橋渡しという意味で 「ネイティブの友だち代わりとなる英会話教材」と言うことにしたのです。

  • 先生のように○×をつけない。同じ目線で話してくれる。
  • 英語の感覚をちゃんと教えてくれるけれど、人間っぽいテキトーさも兼ね備えている。
  • しんどいときに一緒にいてくれるけれど、ベッタリした関係でもない。

そんな『英会話エクスプレス』とあなたの間のご縁が深まり、あなたが英語と大の仲良しになってもらえたら、制作者として嬉しい限りです。

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